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かわいそうなぞう


 戦争が起こり、動物園の猛獣もうじゅうが逃げ出すと危険だということで、殺処分さつしょぶんが行われました。
 猛獣たちは、次々と銃殺じゅうさつされました。
 しかし、お母さん象と、そのダウン症の子象だけは違いました。
 銃弾じゅうだんでは死なず、毒入りのえさを用意したのに、食べないのです。

かわいそうなぞう
「お母さん、お腹空いた」 「毒が入ってるから食べちゃダメだよ」  お母さん象は、餌をもらうため、必死に芸を披露ひろうします。 「芸をすれば、餌をもらえるからね」  しかし、餌はすべて、毒入り。  え死にしそうな子象のために、お母さん象は芸をし続けます。 「お母さん、もうダメみたい」 「諦めちゃダメ!」 「今までありがとうね」 「何言ってるの! 生きるの! 何があっても生きるの!」 「生きるのが辛い」 「そんなこと言わないで」 「・・・」  子象の意識が朦朧もうろうとしてきました。  お母さん象は、必死に芸をし続けます。  そこへ、飼育員が餌を持ってきました。 「お食べ、毒は入ってないよ」 「良いんですか?」 「君たちなら逃げても大丈夫。僕の独断どくだんだ」 「子象や、お食べ」 「お母さん、美味しい」  子象も少し元気を取り戻しましたが、今度は、お母さん象の元気がありません。  お母さん象は、すべての餌を子象に与えていたのです。 「ごめんね、母さんもうダメみたい」 「何で! 何でお母さん餌を食べなかったの!」 「貴方が生き残れるのであれば、命は要らない」 「お母さん、生きて!」  子象は、それ以来、毎日、見よう見まねの芸をし続けます。  お母さん象は、息絶え絶え。  そうこうするうちに、戦争は、終結しゅうけつ。  命がけで身につけた芸をする親子の象は、動物園の最高の見世物となりました。 「これで死ななくて済むね」 「貴方、頑張ったね」 「お母さんのためなら何でもできる」 「あの餌、死んでいった動物たちの肉よ」 「え・・・」 「みんなのために生きるの」 「・・・」 「戦争で生き残るのは犠牲の上に成り立っている」 「みんな・・・」 「生きるって辛いことよ」 「私は何のために生まれてきたの」 「芸でお客さんを喜ばすの。戦争で負けた子供たちに勇気を与えるの。それができるのは貴方しかいない」 「私、生きる! みんなのために生きる!」  そうして、子象は、母亡き後も芸を続けた。 「お母さんが生きるすべを君に教え込んだんだね」 「母は命を賭して守ってくれました」




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