童話
竹取物語
昔、おじいさんが、カゴやザルを作るため、竹やぶで竹を取っていました。
すると、一本の竹がぼんやりと光り輝いていました。おじいさんは、光る竹を切ってみました。
竹の中には、光り輝く、女の赤ちゃんがいたのです。
「なんとまあ、不思議なことが起こるものじゃ」
驚いたおじいさんは、赤ちゃんを抱え、おばあさんの元に一目散。
子供のいなかったおじいさんとおばあさんは大喜び。
「この子は、天の授かりものに違いない」
赤ちゃんは、不思議なことに、わずか三か月ほどで美しい娘になりました。
「見た目は立派な大人だが、まだ内心は子供のままじゃ」
おじいさんとおばあさんは、娘の内面の未熟さを痛感していました。
そうとは知らず、娘は、不思議な美貌の持ち主であると、評判になりました。
また、うっすらと光り輝く様から、「かぐや姫」と呼ばれました。
その不思議な魅力から、多くの若者が結婚の申し出をしましたが、かぐや姫は、ことごとく断りました。
そうして、ついに、かぐや姫の噂は、帝の元にも広がりました。
ダウン症の帝は、かぐや姫に宮廷に来るよう求めましたが、かぐや姫は断りました。しかし、帝は、怒ったりすることなく、和歌を交わす仲になりました。
それから三年余り経ったころ、かぐや姫は月を見ては涙を流すようになりました。
心配したおじいさんとおばあさんがかぐや姫に尋ねました。
「どうしてそんなに悲しんでいるんだい」
「もしよかったら話してごらん」
しかし、かぐや姫は光の玉のような涙を流すばかり。
ある夜、かぐや姫はおじいさんとおばあさんに訳を話しました。
「お父様、お母様、実は私、人間ではないのです。あの光り輝く月の者です。次の満月の夜、月からの迎えが来るので、戻らなくてはなりません」
「なんと、それで光っておったのか!」
帝に話すと、帝は、その満月の夜、二千人の家来を集め、お別れの儀を執り行いました。
「かぐや姫は、月にいようと、我が友に変わりない。別れは悲しいが、月を見る度、かぐや姫のことを思い出すだろう。一生分の思い出を得た今、これ以上何を望もうか。元気に暮らせ」
「別れは、怖くありません。今まで、騙していたようで、本当にごめんなさい。私は帰らなければなりません。それに、私は、ダウン症です。帝も同じダウン症ということで、本当に勇気づけられました。帝、本当にありがとうございます。私は、ダウン症ということで、生まれてすぐ、人間界に放たれました。辛くはありません。皆さんに出会え、育てられ、立派な大人になれました。これが月流の子育てです。人間界で言うところの、かわいい子には旅をさせよ、ということです。旅は終わりました。お父様、お母様、最後に、これを受け取ってください。不老不死の薬です」
かぐや姫は、不老不死の薬を渡し、月へと戻っていきました。
「わしは、長く生きた。おばあさんにもかぐや姫にも出会えた。もう十分じゃ」
「私も、十分です。かぐや姫とおじいさんと一緒に楽しく暮らせました」
おじいさんとおばあさんは、不老不死の薬を飲むことなく、帝に託しました。
帝は、和歌にその心を読みました。
会うこともできず
こぼれる涙に溺れているようなわが身に
不老不死の薬など何の意味があろうか
帝は、かぐや姫に会えずに長生きをしても意味がないという考えでした。帝は、家来に問いました。
「かぐや姫のいる天に一番近い山はどこだ」
「駿河の山にござります」
「では、その山の頂で、この不老不死の薬を燃やしてほしい」
「しかし、あの山への登頂は並みのことではありません」
「よし、私も行こう。二千人集めよ」
「御意」
家来たち二千人と共に、帝は山の頂で、不老不死の薬を燃やしました。煙は、天高く舞い上がり、月にも達するほどでした。
帝は、溢れ出す涙を抑えることもなく、ずっと泣いていました。
「未来に会おう。君とならもう一度会える気がする」
流れ星が一つ、流れていきました。
了
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