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童話


瓜子姫うりこひめ天邪鬼あまのじゃく


 昔々、子供のいない老夫婦ろうふうふがいました。
 おばあさんが、川で洗濯をしていると、大きな瓜が流れてきました。
 おばあさんは、瓜を家に持ち帰り、おじいさんがナタで割りました。
 すると、中から可愛い女の子が出てきたのです。
「なんとまあ、かわいい女の子じゃ」
「仏様からのプレゼントですかねぇ」

 女の子は、「瓜子姫」と名付けられ、すくすくと成長しました。
「姫や、おじいさんとおばあさんは、出かけますが、誰も家に入れてはダメですよ」
「分かりました」
 瓜子姫が留守番をしていると、尋ね人ができました。
「瓜子姫や、戸を開けておくれ」
「誰も家に入れてはダメと言われていますので」
「もう何日も食事をしていないんだ。何か分けておくれ」
「・・・分かりました」
 瓜子姫は、戸を開けてしまいました。しかも、相手は、悪名高あくめいたかき天邪鬼だったのです。
「馬鹿ばかめ」
「きゃあ!」
 天邪鬼は、瓜子姫をさらい、木にくくりつけて戻ってきました。

 そこへ、おじいさんとおばあさんが戻ってきて、言いました。
「瓜子姫や、喜びなされ」
「桃太郎様が貴方に会いたいそうじゃ」
「これから、お迎えに来てくださるそうですよ」
「分かりました」
 天邪鬼は、瓜子姫に化け、桃太郎の妻になろうとしました。

 そして、桃太郎の一行が、天邪鬼を迎えに来ました。
 桃太郎の家に向かう道中、八咫烏やたがらすが激しく鳴きました。一行は、不審に思い、少し調べたところ、木に括りつけられていた瓜子姫を見つけました。

「貴方は、瓜子姫様ですか?」 「はい」 「では、我々に帯同たいどうしているのは誰なんでしょう?」 「天邪鬼です」 「しまった、桃太郎様、その者は、天邪鬼です!」 「気付かれたか、死ね、桃太郎!」 「甘く見るな、すべてお見通しだ!」  桃太郎は、天邪鬼をやっつけて、瓜子姫の元に駆け寄ります。 「大丈夫かい、瓜子姫」 「ええ、殺してしまったんですか?」 「いや、気を失ってるだけだよ」 「良かった」 「うわさにたがわない、優しい方だ」 「私を妻として迎え入れるんですか?」 「ああ、そうさ」 「・・・ダウン症なんです」 「僕もだよ」 「え!」 「君と同じだよ」 「知りませんでした」 「一緒になってくれるかい?」 「・・・幸せになってはいけない気がするんです」 「人は誰でも幸せになる権利けんりがある」 「天邪鬼さんも?」 「・・・本当に優しいんだね」 「よく言われます」 「あはは、今の世の中には、その優しさが必要とされているんだ」 「共に、この世を優しさであふれたものにするために尽力してほしい」 「私にできますか」 「もう十分してる」 「僕たち、ダウン症の者にしかできないことがある」 「何ですか」 「優しさで世界を変えることさ」 「素晴らしいお考えですね」 「人並み以上に苦労した結果たどり着いたんだ」 「いつまでも支えていきます」 「ありがとう、何よりの理解者だよ」 「本当に幸せになっていいんですね?」 「世間が味方してくれる。そういう世の中になったんだ」




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  1. http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/15.htm

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