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第一章 第七話


 ある休日の昼過ぎ、カズの母とカズの妹が、近所のスーパーで買い物をしていた。
「おお、大きくなったね!」
 アナの祖父が、カズの妹に声をかけて、頭を撫でた。
「ああ、お祖父さんも大きくなって」
「身も心も小さくなる一方じゃよ」
「ハッハハハハ」
「四月から小学生かい?」
「あら、お祖父さんも?」
「まさか!」
「ハッハハハハ」
「でも、新型コロナウイルスの所為で、休みになってしまったの」
「入学早々、大変じゃな」
「そうなの、入学式もなしだって!」
 カズの妹が、悔しそうに地団駄を踏んだ。
 それから、カズの妹とアナの祖父は、楽しそうに一緒に買い物をした。
「それじゃ、またね!」
 カズの妹が、アナの祖父に声をかけた。
「ああ、生きていればね」
「ハッハハハハ」

 新型コロナウイルスは、ますます猛威を振るった。

 2020年4月7日のニュース記事:  東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県対象に「緊急事態宣言」が発出された。感染拡大に歯止めを掛けるためにも、不要不急の外出の自粛、3密の回避など一人ひとりの努力が求められている。nippon.com
 新型コロナウイルスの影響は、これに止まらなかった。 「お祖父ちゃんが、入院しちゃった……」  アナの母が、心配そうにアナに告げた。 「なんで!」 「新型コロナウイルスに感染したって……」  アナの祖父が、高齢者施設で、新型コロナウイルスに感染して、病院に搬送された。 「お祖父ちゃん、大丈夫なの?」  アナが、アナの母に心配そうに聞いた。 「面会不可だから、何とも言えないけど、お医者さんが、頑張ってくれているから」  アナの母が、不安そうに答えた。 「そんな……」  アナは、どうすることもできなかった。 「カズの妹さんも、入院しているのよ」  アナの母が、アナに告げた。 「カズの妹も!」  カズの妹も、高熱が出たことから、病院に行って、感染が確認されて、入院してしまった。 「どうして、看病に行けないんだ!」  カズが、自宅で、カズの妹の入院の話を聞いて、声を荒げた。 「これ以上、感染者を増やせない。祈るしかないの!」  カズの母が、カズをなだめた。  アナの祖父とカズの妹の濃厚接触者は、PCR検査を受けて、陰性が確認された。  放課後、アナ、カズ、義助は、支援学校の教室で、情報交換をしていた。アナとカズが、家族の入院に直面して、落ち込んでいた。 「僕は、どうすれば……?」  義助が、思い悩んだ。 「義助は、今、できることに邁進するしかない」  アナが、義助に助言した。 「二人の回復を祈って、東京パラリンピックで活躍するよ!」  義助が、練習に打ち込んだ。 「一緒に練習して良いかい?」  アナとカズが、義助に申し出た。 「もちろん!」  義助は、アナとカズの申し出が、とても嬉しかった。そうして、アナとカズも、義助の練習に付き合ってくれた。義助の練習には、義肢装具士の義助の母、支援学校の先生、支援学校の生徒など、多くのサポートがあった。 「このチームの為に勝ちたい!」  義助が、自身を奮い立たせた。 「すまんことをしてしまった……」  アナの祖父が、ひどく反省していた。  実は、アナの祖父が、カズの妹に新型コロナウイルスを移してしまったのかも知れないのだ。  あの日、アナの祖父が、スーパーで、カズの母とカズの妹に会って、カズの妹の頭を撫でて、楽しそうに会話をした。たったそれだけのことだったが、祖父は、自戒の念に苛まれた。 「あの子だけは、救わねば」  アナの祖父が、強く希望した。  アナ、カズ、義助は、新型コロナウイルスのことを忘れる為のように、練習に打ち込んでいた。 「義助をパラリンピックに出場させてあげたい」  アナが、願った。 「そうだね」  カズも、同意見だった。  三人が、ニュースに一喜一憂していた。  義助は、不安の中、一心不乱に練習に励んだ。


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