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第一章 第八話


 2020年4月17日のニュース記事:  安倍晋三首相は十六日、新型コロナウイルスの感染増加に対応する緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した。七日に発令した東京、大阪など七都府県から対象地域を追加。新たに対象となった地域の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は五月六日まで。感染拡大に歯止めをかけ、医療崩壊を防ぐには、大型連休中を含めた人の移動を全国一斉に抑える必要があると判断した。十六日夜に効力が発生した。   政府は基本的対処方針を改定し、感染者が急増する北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府の六道府県と、七日に宣言を先行させた七都府県の計十三都道府県について、特に重点的な対策を進める「特定警戒都道府県」と位置付けた。緊急事態宣言は改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく私権制限を伴う措置。海外のような都市封鎖(ロックダウン)は想定していない。  首相は官邸での対策本部会合で、今月下旬からの大型連休に向け、不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたぐ移動の自粛を要求。「最低七割、極力八割の接触削減を何としても、実現しなければならない」と力説した。十七日夜に官邸で記者会見を開く。東京新聞
「非常事態宣言……」  アナ、カズ、義助が、言葉を失った。  義助のSNSのメッセージ:〈非常事態宣言が出てしまった〉  義助が、ルドルフと李武志に連絡を取った。  ルドルフのSNSのメッセージ:〈こちらも、同じさ。日本より酷いかも知れない〉  義助のSNSのメッセージ:〈どうなるんだ、東京オリパラ……〉  李武志のSNSのメッセージ:〈今できる最大限のことをしよう。東京オリパラが、開催されることを祈って。兄に報いたいから〉  義助の母は、昼は、義肢装具士として、病院に勤務して、夜は、スナックのチーママをしていた。確かに家計は、厳しかったが、全ては、義助の夢を実現する為だった。そんな中、非常事態宣言が出て、スナックの仕事が、全くなくなった。 「お母さん、ゆっくり休んでね」  義助が、心配そうに義助の母に声をかけた。 「新型コロナウイルスのおかげで、義助と一緒に居られるわ」 「超プラス思考だな〜」 「ハッハハハハ」  こんな状況でも、障害児には、余裕があった。これまで、人生の辛酸を嘗めてきた強さと信念がそこにあった。
 2020年4月22日のニュース記事:  東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長は、コロナ拡大で来夏へ延期された東京大会に関し「開催できれば人類全体に降り掛かった災いを乗り越えた証しになる」と意義を述べた。一層の経費節減に努め、開会式の内容や演出を大幅に変更する意向も示した。共同通信のインタビューに答えた。  森氏は東京大会について「(危機に対する)人間の挑戦でもある。アスリートの祭典にとどまらない、より大きく重いテーマが課せられた」と強調。日本中がウイルス終息や経済支援、医療態勢整備に全力を挙げている現状を踏まえ「国民の気持ちとかけ離れた五輪にしてはならない」と訴えた。大分合同新聞
 2020年4月23日のニュース記事:  東京都の小池百合子知事は23日、都庁(新宿区)で開いた新型コロナウイルスの対策本部会議で、政府による緊急事態宣言発令後も続くスーパーなどの混雑を緩和するため、都民に買い物の頻度を3日に1回程度に減らすよう呼びかけていく考えを示した。  都は今週末の25日から大型連休最終日の5月6日までの期間について、外出を特に控えてもらう「ステイホーム週間」と設定。ジョギングや散策目的の来園者の増加が指摘されている都立公園でも駐車場を閉鎖し、園内の密集状態の軽減を図るという。読売新聞オンライン
 ほどなくして、カズの妹が、退院した。カズの家族、アナ、義助が、退院したカズの妹を迎え入れた。 「病床で、五輪SNSを見ることができたんです! お兄ちゃんのおかげだわ!」  カズの妹が、嬉しそうに語った。  実は、カズがカズの母に頼み込んで、カズの妹にスマホを買い与えて、五輪SNSで、勇気付けていたのだ。 「退院できて、本当に良かったね」  アナが、優しく声をかけた。 「義助さんの活躍が、力になりました」 「ありがとう、義助」  カズが、お礼を言った。 「僕は、何も……」 「いや、力になった」 「僕も、誰かの力になれるのか……」  カズの妹の為になれたという事実が、義助を鼓舞した。以来、義助が、開眼したように、練習に奮起した。  義助の五輪SNSのメッセージ:〈挫けそうになったけど、みんなのおかげで、気持ちを繋げることができた。ありがとう。みんな、東京オリパラに向けて、今一度、集中しよう!〉  義助が、自ら、世界中の人々に声をかけた。  五輪SNSのメッセージ:〈そうだそうだ!〉  世界中から、賛同の声が上がった。  カズの妹の退院の情報は、看護師から、アナの祖父にも伝えられた。 「本当に無事で良かった」  アナの祖父が、病床でカズの妹の退院を心から喜んだ。アナの祖父は、毎日手を合わせて、カズの妹の無事を祈っていた。


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