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第二章 第一話


ここまでのあらすじ

アナ、カズ、義助は、支援学校の高等部二年生で、泳子は、中学部二年生です。義助は、東京パラリンピックへの出場を決めました。8月3日に、東京オリパラが、一年間延期されることが発表されました。

 2020年8月の夏休み中、アナ、カズ、義助は、支援学校の運動場で、東京パラリンピックに向けて、自主練をしていた。アナは、400メートル走、カズは、水泳での東京パラリンピックへの出場の可能性を模索していた。 「ちょっと、一服しよう」アナが、弱音を吐いた。 「またかよ、まあ良いけど」義助も、練習を中断して、休憩することにした。  三人は、運動場の木陰で、水分補給をしたり、スマホをいじったりしていた。 「あ〜あ、夏休みが短い!」アナが、愚痴った。 「仕方ないさ。僕らだって、勉強しなきゃいけないんだから」義助が、アナをなだめた。 「カズは、良いよな〜。勉強ができて」 「僕は、家でも、予習復習をしているから。夏休みが短くても同じだよ」カズは、大学の医学部を志望していたので、勉強に熱が入っていた。家での勉強の指導をするのは、カズの母の役目だった。  三人は、各自のスマホで、インターネットのニュース記事を見ていた。
パリのマスク

 2020年8月9日のニュース記事:  ヨーロッパでは先月中旬から新型コロナウイルスの感染者が再び増える傾向にあり、フランスの首都パリの警視庁は、屋外でも混雑する場所ではマスクの着用を義務化すると発表しました。マスクの着用は、これまで公共の交通機関や公共施設などで義務づけられていましたが、国内の感染者が増加傾向にあることを受けて、先月末から、自治体の判断で屋外でもマスクの着用を義務化できるようになりました。

「第二波真っ只中ね。こんな夏休みの過ごし方も、ある意味新鮮ね」アナが、清々しそうに言い放った。 「アナは、相変わらずポジティブだな」義助が、突っ込みを入れた。 「ハッハハハハ」 「こんなニュースもあるよ」カズが、嬉しそうにスマホのニュース記事をアナと義助に見せた。
流しそうめん

 2020年8月9日のニュース記事:  新型コロナウイルスの影響で観光客が激減している島根県津和野町で、明るい話題を提供しようと、流しそうめんを子どもたちが食べずに見守るユニークな催しが開かれました。

「上手いプロモーションだね」アナが、感心した。 「苦肉の策なんだろう。それが、思いもかけない効果を生む。コロナ禍ってのは、そう言う時なのかも知れない」義助も、意見を述べた。 「東京オリパラも、これ以上の策を練らないと」カズも、先を見据えていた。 「こんなのもあるよ」義助も、ニュース記事を見つけた。
送り火

 2020年8月10日のニュース記事:  京都のお盆の伝統行事「京都五山送り火」は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ことしは規模を大幅に縮小し、文字や形を描かずに実施されます。実施を前にした8日夜、送り火が行われる山に何者かが光で「大」の形の文字を浮かび上がらせていました。大文字保存会によりますと何者かが山に登って無断で私有地に入り、大がかりな照明などを用いてライトアップしたとみているということです。

「誰が、やったんだろう。凄い実行力だわ」アナが、興奮気味。 「神業だね。まさに、神事だよ、これは」カズも、驚嘆していた。 「でも……最近、ニュースに振り回されているね」アナが、冷静に言った。 「気になるもんな。東京オリパラの行方が」 「どうなっちゃうんだろう」 「ま、開催されるだろう、と信じて邁進するのみだ」義助が、覚悟を決めた様子だった。  この頃、世界中が、新型コロナウイルスのニュースに注目していた。  その中で、東京オリパラの開催の可否が問われていた。


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