〇〇〇〇〇

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第二章 第三話


 翌日、カズは、学校を休んだ。
「お見舞いに行きますか」アナが、義助を誘った。
「そうだね」
 アナと義助が、カズの家に、お見舞いに行った。
 カズの母が、買い物に出かけていて、カズが、玄関のドアを開けた。
「来ちゃダメだよ。コロナだったら、どうするんだい?」カズが、アナと義助を見て言った。
「一緒に入院するだけさ」義助が、ことも無げに答えた。
「大親友のカズの為だ」アナも言った。
「そっか、ありがとう。手ぶらなのかい?」カズが、精一杯の冗談を言った。
「ハッハハハハ」
「そう来ると思ってな、良いものを持って来た。手紙だ」アナが、一通の手紙を手渡した。
「アナの手紙?」
「泳子からだ」アナが、答えた。カズは、泳子のことを好いていた。
「泳子か……頑張っている?」
「必死に体幹鍛えている」
「そうか。プールは、遊泳禁止か」
「そう言うことだ。早く読めよ、泳子の手紙」
「後で読むよ」
「照れ屋さんだな」
「ハッハハハハ」三人が、一緒になって笑った。
「それじゃ、帰るよ」アナが、さらりと言った。
「あ、もう帰るんだ」カズが、意外そうに答えた。
「移されたくないからな」
「ハッハハハハ」

 アナと義助が、帰った後、カズが、泳子の手紙を読んだ。
 手紙:〈カズのお父さんを尊敬している。自信を持ってくださいな〉
 たった二行書いてあった。
「ありがとう、泳子……」
 それは、カズにとっての最高の賛辞だった。カズは、涙が止まらなかった。

 数日後、カズが、学校に復帰した。
「ただの風邪だった」カズが、アナと義助に報告した。
「心配かけやがって……無事で良かった」アナが、笑った。

 放課後、カズが、泳子の練習を見に行った。泳子は、体育館で、体幹を鍛えていた。
「ありがとうな、手紙」カズが、泳子にお礼を言った。
「手紙?」泳子が、キョトンとした。
「あの二行の」
「知らない」
「……じゃ、誰からの手紙だったんだろう?」
「どうされたんですか?」
 泳子が、問うので、カズが、手紙のことを話した。
「多分、アナさんだと思いますよ。そんなことするのは」泳子が、嬉しそうに言った。
「アナか……やりかねないな」
「ハッハハハハ」
「素晴らしい方ですから」
「ああ。練習頑張って」
「はい」
 カズが、泳子の元を去って、運動場のアナと義助の元へ行った。
「アナ、手紙ありがとうな」カズが、決まり悪そうに告げた。
「プッ」アナが、吹き出して笑った。

 そんな中、支援学校の先生が、一人、新型コロナウイルスに感染してしまった。
 三人も、濃厚接触者だったので、自宅待機を強いられた。
「お母さん、移っちゃうよ」アナが、自宅で、内職をしていたアナの母の心配をした。
「アナから移されるなら、本望だわ」アナの母が、笑った。

 アナのメール:〈回復するのを待ってますから〉
 アナが、支援学校の先生に、メールで激励をした。
 カズと義助も、同様にメールを送っていた。
 先生のメール:〈ありがとうね。みんなも体調に気を付けてね〉
 先生が、喜んで、メールを返信してくれた。

 三人は、五輪SNSで、世界中の仲間と連絡を取り合った。
 泳子も、その仲間に入った。
 アナのSNSのメッセージ:〈ね、病院でボランティアをしない?〉
 カズのSNSのメッセージ:〈病院で何するんだい?〉
 アナのSNSのメッセージ:〈……ノーアイデア〉
 カズのSNSのメッセージ:〈それじゃダメじゃん〉
 アナのSNSのメッセージ:〈なんかできることがあると思うの。これまでの恩返しとしてさ〉
 義助のSNSのメッセージ:〈僕もやってみたいな〉
 アナのSNSのメッセージ:〈義助は、練習しろ〉

 その日の晩、カズの父が、帰宅した。
「病院でボランティアをやりたいんだけど」カズが、カズの父に申し出た。
「そんなに甘いものじゃない……その気持ちは、ありがたいけどね」カズの父が、きっぱりと断った。
 カズのSNSのメッセージ:〈ボランティア、ダメだって〉
 アナのSNSのメッセージ:〈そうか。残念だけど、足手まといかもな〉
 カズのSNSのメッセージ:〈「気持ちはありがたいって」言っていたよ〉
 アナのSNSのメッセージ:〈そうか。でも、なんか貢献したいね〉
 カズのSNSのメッセージ:〈そうだね、何か……〉


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