数日後、アナ、カズ、義助は、相変わらず、放課後に、スマホのニュース記事に見入っていた。この水泳大会には、泳子が、出場することになっていた。東京パラリンピックの選考会は、兼ねておらず、久しぶりの大会となった。 「泳子、体調が悪かったら、無理するなよ」カズが、泳子に優しく声をかけた。 「緊張するけど、久しぶりだから」泳子が、ガチガチに緊張していた。 「優勝しかない!」アナが、泳子に喝を入れた。 「頑張りま〜す!」 「ハッハハハハ」 泳子の出番が、やって来た。 スタート位置について、ピストルの音が鳴った。 泳子のスタートは、まずまずだった。 泳子は、必死に泳いだ。 そして、ゴール。 あまりいい成績を残せなかった。 泳子に笑顔はなかった。 「選考は、まだ先なんだから、一生懸命練習すれば良いよ」カズが、泳子を慰めた。 「悔しい……」泳子が、涙を見せた。 「二人きりにしてあげようか」義助が、アナの耳元で囁いた。 「そうね」アナも、カズと泳子を二人きりにさせた。 カズと泳子は、しばらく話し込んでいて、泳子にも笑顔が見えた。 「純ね」アナが、しみじみと言った。 「ああ、心が洗われる」義助も微笑んだ。2020年8月22日のニュース記事: 東京 江東区の東京辰巳国際水泳場で開かれたこの大会は、東京都水泳協会が企画しました。会場に選手や関係者が密集することを避けるために、レースが行われる日程は年代ごとに分けられ、初日の22日は小学生の部に700人余りの選手が参加しました。選手たちはスタート台の足を置くプレートの位置を調整する前後で手を消毒していたほか、レース直後はプールサイドの休憩所で呼吸を落ち着かせてからマスクを着けて退場するなど、協会が医師の監修の下で独自に作成した感染防止対策のガイドラインに沿った形で競技を進めていました。
義助は、このニュース記事を自宅で見ていた。 「勇気付けられるな。負けていられないぞ」 義助が、気合いを入れ直した。2020年8月24日のニュース記事: パラ陸上男子走り幅跳び義足のクラスの世界記録保持者で「ブレードジャンパー」とも呼ばれるドイツのマルクス・レーム選手は東京オリンピックの金メダリストの記録を上回る跳躍でパラリンピック3連覇を達成するという目標を今も変えず大会にも出場しながら調整を重ねています。レーム選手は来年の東京パラリンピックで3連覇を目指すことを改めて目標に掲げたうえで「自分の世界記録を更新して優勝したいし、東京オリンピックで優勝した選手の記録を超えるジャンプをしたい」と意気込んでいました。そのうえで、大会を開催する意義については「オリンピックとパラリンピックがともに協力できるチャンスだと思う。パンデミックに対して互いに協力できればすばらしいことだ」と話していました。