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第三章 最終話
夜になって、ライブ配信は、再び、日本に戻って来た。
舞台は、泳子の病室。
今まさに、泳子が、意識を戻して、
「ありがとう」
と、一言だけ告げた。
五輪SNSのメッセージ:〈この『ありがとう』を聞く為に二十四時間頑張ったんだ〉
五輪SNSのメッセージ:〈世界で一番美しい『ありがとう』だった〉
五輪SNSのメッセージ:〈この為に、手術を早く終了させたのね!〉
静止衛星は、泳子の総合病院の屋上を映し出した。
ライブ配信を見ていた人々が、目を凝らした。
そこには、「ありがとう」と、文字が浮かび上がっていた。
病院関係者と患者の人文字だった。
みんなで、世界中の人々にお礼を伝えた。
*
静止衛星が、東京の夜景を映した。はじめは、誰もが、何でもない映像だと思っていた。
だが、違った。
ライブ配信を見ていた人々が、それに気付いた。
五輪SNSのメッセージ:〈これ、エンブレムじゃないか……?〉
東京では、街の灯りで、東京オリパラの市松模様のエンブレムを描いていたのだ。四角い窓の明かりが、市松模様にマッチしていた。
五輪SNSのメッセージ:〈やるな、東京〉
東京都民の協力なくして、成り立たない企画だった。
「東京オリパラを成功させたい」
それが、東京都民の、日本人の心からの願いだった。
ライブ配信が始まって、二十四時間後。
東京の日の出を迎えた。
エンブレムの灯りが、メッセージに変わった。
メッセージ:〈ありがとう。東京オリパラで会おう!〉
メッセージが、ゆっくり日の光の中に消えて行った。
泳子は、病室のベッドの中で、ライブ配信のエンディングを見ていた。
カズの父が、回診に行った。
「東京オリパラに間に合いますか?」
泳子が、不安そうに聞いた。
「君ならできる。大丈夫。アナや義助、それにカズだって、見守ってくれているんだから」
カズの父が、太鼓判を押した。
「良かった……」
ライブ配信が、終わった。
了
画像の出典
- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200626/k10012485661000.html
- http://tokyoskytree.blog.jp/archives/64734188.html
- https://www.youtube.com/watch?v=OEFfrdnvWZs
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