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第六章 第一話


この章は、2020年末に描かれたものであり、事実と異なる点があります。
 東京パラリンピックの開催前。
障害病棟
 国立競技場(オリンピックスタジアム)の近くの総合病院の敷地内には、三階建ての〈障害病棟〉が、設けられた。障害病棟は、この総合病院の一般病棟の脇にあって、主に障害のある人を専門に治療することになっていた。障害病棟には、全国から、専門医やボランティアなどが、多く集まった。東京パラリンピック中には、選手や観客など、多くの障害のある人が、訪れることとなった。  障害病棟は、東京パラリンピックの期間中のみ活動されることになっていて、東京パラリンピックの閉会式の翌日の正午に閉鎖されることが決まっていた。
「パラリンピック、楽しみだね!」  アナが、東京パラリンピック前に、待ちきれない様子だった。  義助が、東京パラリンピックの特集サイトを見ながら、 「障害病棟のボランティアをしないかい?」  と、提案した。 「え、そんなことできるの?」  アナが、驚いて聞き返した。 「障害児者も歓迎って書いてある」 「やってみたい!」  それから、アナ、カズ、義助が、障害病棟のことを調べて、ボランティアの応募をした。  数日後、三人揃って、障害病棟で働くことになった。アナは、障害病棟の託児所、カズは、医師の補佐として手術にも携わり、義助は、義肢装具士の手伝いをすることになった。また、三人は、入院患者のリハビリなども担当することになっていた。  支援学校には、夏休み明けに、休みを延ばしてもらうことで合意した。  三人は、東京パラリンピックの期間中、東京に出て、この障害病棟で働くことになった。三人は、その間、障害病棟の近くで、寮の相部屋生活をすることになった。朝食は、寮で食べて、昼食と夕食は、障害病棟の食堂で、食べることにしていた。食費や宿泊費は、三人が、アルバイトで貯めたお金を前納していた。三人は、不安がなかった訳ではなかったが、仲睦まじく、その任務を全うすることになった。
 三人の支援学校には、中等部三年生のダウン症の泳子がいた。泳子は、支援学校の水泳部の選手で、手術後の大会で、見事、東京パラリンピックの出場の内定を勝ち得ていた。 「頑張るんだよ、泳子。支援学校の希望の星なんだから」  アナが、泳子の指導をしていた。 「一位になります!」 「ハッハハハハ」  アナと泳子は、二人三脚で、東京パラリンピックに向けて、練習に励んでいた。実は、アナは、昔、水泳部の選手だった。アナは、将来を嘱望される選手だったが、水泳を辞めた。アナは、そのことについて、多くを語ることはなかった。  一方、カズは、医師志望でありながら、お笑いにも興味があって、ピン芸人として、自由気ままにネタを作っていた。普段は、アナと義助にネタを披露することで満足していた。 「スベりまくりだな」  アナが、カズの芸を見て、酷評した。 「何だよ、それ!」 「ハッハハハハ」  カズは、真剣に医師を志していたものの、芸にも真剣に取り組んでいた。それは、将来、医師になれなかった時、せめて障害児を笑顔にしたかった。ただ、それだけの思いだった。  カズは、障害病棟でボランティアをするついでに、東京で開かれる芸人のオーディションを受けようとしていた。 「オーディションって、いつやるの?」  アナが、カズに聞いた。 「パラリンピックの閉会式の翌日の午前」 「ちょうど良いじゃん。これも何かの縁。頑張って!」 「どうせ落選だろうから、忙しかったら、辞退しようと思っている」 「後ろ向きだな~」 「ハッハハハハ」  義助は、パラスポーツ予選大会で好成績を残して、東京パラリンピックに内定して、練習に余念がなかった。アナとカズも、その姿を応援していた。 「ルドルフと再会するのが、楽しみなんだ」  義助が、嬉しそうに言った。 「ルドルフ来るの?」  アナが、驚いた。 「分からないけど、予選は通過したらしい。五輪SNSで、情報をゲットしたんだ」 「そうなんだ~。楽しみ!」  五輪SNSのルドルフの投稿:〈義助、約束、果たしたぞ〉  五輪SNSの義助の投稿:〈楽しみにしている〉  義助とルドルフが、五輪SNSで、交流を深めた。 「ルドルフ、パラ内定したって」  義助が、アナとカズに報告した。 「さすが!」  アナが、小躍りして、喜んだ。  障害病棟の院長先生は、アナ、カズ、義助がお世話になっていた地元の総合病院の院長先生だった。 「先生が、院長先生なんて、心強いわ」  アナが、院長先生に微笑んだ。 「でしょう」 「ハッハハハハ」 「どうして、障害病棟の院長先生になったんですか?」 「三人の為だよ」 「え、本当ですか!」 「嘘」 「ハッハハハハ」 「三人のこともそうだけど、障害のある人の為になりたくてね。院長になったのは、たまたまだよ」  院長先生が、微笑んだ。本当に頼りになる院長先生だった。


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画像の出典

  1. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42988890X20C19A3L72000/

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