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第六章 第二話
時は経ち、東京オリンピックの開会式・閉会式が、終了した。
続いて、パラリンピックの開会式が、行われた。パラリンピックの開会式では、新型コロナウイルスで亡くなった方への黙祷が、行われた。
そして、パラリンピックのプログラムが、順調に遂行されて、あっと言う間に、パラリンピックの最終日になった。最終日の午後には、泳子、義助、ルドルフの決勝が行われることになっていた(※実際の東京パラリンピックとは、スケジュールが、やや異なります)。
パラリンピックの最終日の正午、障害病棟の院長先生が、障害病棟の職員を集めて、ミーティングをした。アナ、カズ、義助も、それに参加していた。
「いよいよ、あと二十四時間で、障害病棟が、幕を閉じます。最後まで、気を抜かないように、患者さんの為に尽くしましょう!」
「はい!」
最終日は、午後にいくつかの競技が、行われて、夜には、閉会式が、開催されることとなっていた。そして、翌日の正午、障害病棟の閉鎖を迎えることになっていた。
アナ、カズ、義助が、障害病棟の食堂で、昼食を食べていた。
「この食堂も、お別れか……」
アナが、寂しそうに呟いた。
「寂しくなるね」
義助が、残念そうに言った。
「あ、待って。SNSの投稿来ている」
アナが、スマホの着信を確認した。
五輪SNSのアナの母の投稿:〈ちゃんと食べているの?〉
アナの母が、アナに連絡をして来ていた。
五輪SNSのアナの投稿:〈吐くほど食べてる。だって、食べ放題なんだもん!〉
五輪SNSのアナの母の投稿:〈そう、安心した。けど、痩せる努力をしなさい!〉
五輪SNSのアナの投稿:〈食べろとか、痩せろとか……〉
五輪SNSのアナの母の投稿:〈ハッハハハハ。元気なら、それで良い〉
アナが、微笑みながら、スマホをしまった。
「誰から?」
義助が、アナに聞いた。
「お母さん。もりもり食べなさいって」
「ハッハハハハ」
アナは、結構機転の利く、クレバーな一面があった。カズと義助は、そんなアナが、大好きだった。
「アナ、ホームシックは、もう大丈夫かい?」
義助が、アナに優しく聞いた。
「うん。もう大丈夫。御迷惑をおかけしました」
「ハッハハハハ」
「初日からだったからな」
義助が、懐かしそうに思い出していた。アナが、初日から、ホームシックになっていた。
「夜中、ずっと泣いてたよね」
カズも、その時の様子を思い出した。
「今じゃ、良い思い出よ!」
アナが、元気に言った。
「ハッハハハハ」
「それより、義助。アップしなくて良いの?」
アナが、義助に聞いた。
「両立させたいんだ。仕事とパラ。将来のためにね」
三人は、患者としても、障害病棟のお世話になっていた。
アナが、障害病棟で、専門医に心臓の検査をしてもらった。
「うん、心臓の状態も、まずまずだね」
専門医が、太鼓判を押した。
「良かった。このまま何事もなく、ボランティアを全うします」
「その意気!」
「ハッハハハハ」
カズも、発達障害の検査をしてもらった。
「だいぶ症状が、改善されて来たね」
専門医が、告げた。
「本当ですか!」
「うん、集中力が増しているよ。充実した日々を送っているからかな」
「嬉しいです!」
「ハッハハハハ」
義助は、義肢装具士に、義足の調整をしてもらっていた。義助の母も、義肢装具士だったが、仕事の関係で、義助に帯同することはできなかった。義助は、少し不安だったが、障害病棟の義肢装具士も、素晴らしい技術を持っていた。義助は、義肢装具士から、多くを学んだ。
「気になることある?」
義肢装具士が、義助に聞いた。
「いえ、ぴったりです」
「そうか、ぴったりか」
「ハッハハハハ」
「そう思うと、しっくり来て、良いタイムが出せますから」
義助が、義足を愛おしそうにさすった。
「頑張って」
義肢装具士は、そんな義助の姿を万感の思いで、見つめていた。
「はい」
義助は、緊張の高まる中、障害病棟の仕事に精を出していた。もちろん、パラリンピックの練習も欠かさなかった。
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