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第七章 第四話
第一回チーム五輪大会の開催が決まった。東京オリパラの翌年、東京開催だった。
開催間近の休日の午後、アナ、カズ、義助が、五輪SNSの投稿を読んでいた。
「ようやく、開催にこぎつけたね」
カズが、高揚して言った。
「いよいよ始まる……」
アナが、感慨深げに五輪SNSの画面を見つめた。
第一回チーム五輪大会には、JOC日本オリンピック委員会の委員が、視察に訪れることになった。
「裏方に徹するわ」
アナが、案内役を買って出た。
「良いのかい?」
義助が、心配して聞いた。
「それが、一番しっくり来るの」
「それじゃ、頼んだ」
第一回チーム五輪大会には、二百人ほどの参加者があった。そのうち、七割は障害者だった。チーム五輪の構想が、持ち上がった時に、アナが、五輪SNSを介して、呼び掛けていた。
「面白そうじゃん」
参加者の多くは、東京オリパラの選手とその関係者だった。参加者が、それほど多くなかったので、予選をする必要はなく、全員出場できた。
「僕らも出場するね」
カズと義助も、チーム五輪を体感する為、競技に参加することにした。
参加者は、世界中から集まった。競技の数は、参加者に合わせて、東京オリパラよりも少なくなったが、クラス分けは、東京パラリンピックと比べて、大雑把だった。なぜなら、チームのサポートで、障害があっても、十分に健常者に太刀打ちできる可能性があったからだった。クラス分けは、極力控えて、健常者と障害者が、同じ舞台で競うと言うチーム五輪の精神に則った。そう言う訳で、障害者には、チームのサポートが付いた。障害者のチームは、この短期間で、最大限のサポートを心がけてくれた。
五輪SNSのアナの投稿:〈短期間での準備、ありがとうございます。第一回チーム五輪大会が、素晴らしい大会になるように、祈っております〉
アナ、カズ、義助が、五輪SNSで、各選手のチームに感謝した。
世界中の選手の為に、多種多様なスポンサーが、協力してくれた。大会にそれほど費用がかかっていなかったが、スポンサーは、その意義を感じて、手厚いサポートをしてくれた。
第一回チーム五輪大会の日が来た。アナ、カズ、義助が、会場に現れた。
「来たよ~」
ルドルフ、泳子、笑美が、揃って、アナ、カズ、義助の元を訪れた。
「来てくれたんだ!」
アナが、大いに喜んだ。
「出場はしないけどね。教え子の指導に来たんだ」
ルドルフが、義助に伝えた。
「そうか、寂しくなるな」
「まあ、優勝してくれよ」
「軽く言うなよ」
「ハッハハハハ」
「私は、出場するのよ」
泳子は、水泳競技に出場することになっていた。アナは忙しいこともあり、泳子の指導はできなかった。それでも、泳子は、自主練に励み、この日に臨んだ。
笑美の手話:〈聴覚障害者もね!〉
笑美も、陸上競技に出場することになっていた。このチーム五輪大会には、聴覚障害者も出場できた。
アナの手話:〈頑張ってね!〉
アナが、かつてのカズの手話をして、万感の思いで応援した。
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