花
第三話
アナと妹子が、小学六年生になった。支援学級には、アナとカズの他、三人の生徒が、在籍していた。アナは、支援学級の生活にも慣れ、毎日楽しく学校に通っていた。アナは、支援学級の後輩もできて、その子たちを守ることで、先輩として威厳を保った。自分が守ってあげなくてはいけない、そうした使命感に燃えていた。一方、支援学級の後輩は、アナを慕い、とても頼りにしてくれた。アナは、それが、何より嬉しかった。
支援学級の教室裏には、比較的大きな花壇があった。その花壇では、色々な花を栽培していた。支援学級の生徒が、甲斐甲斐しく、手入れをしていた。
休日、アナが、家族と一緒に祖父母のお墓参りに行った。
「あ、種が、落ちている」
アナが、墓地で、花の種を拾った。
「なんの種だろうね」
妹子も、興味津々にその種を見ていた。
翌日、アナが、早速、その種を支援学級の教室裏の花壇に蒔いた。
「何の花が咲くかな? 四葉のクローバーだったら嬉しいな」
アナが、カズに言った。
「咲くかもよ〜」
「ハッハハハハ」
アナは、毎日、嬉しそうに花壇に水をまいて、花を育てていた。アナは、花が好きな子だった。
ある日、アナが、支援学級の教室裏の花壇で、水をまいていた。そこに、数人の普通学級の生徒がやって来た。
「障害児が、失せろよ!」
普通学級の生徒が、アナに絡んで来た。
偏見だった。
「すみません」
アナが、謝っていた。しかし、普通学級の生徒が、アナをど突いて来た。
「何してるの!」
助っ人が現れた。
妹子だった。妹子が、アナを守る為、普通学級の生徒と取っ組み合いの喧嘩をした。妹子は、劣勢だった。
「止めろ!」
カズが、やって来て、参戦してくれた。
「なんだ、こいつら。キモいぞ」
普通学級の生徒は、立ち去って行った。
「大丈夫か、アナ?」
カズが、アナに聞いた。
「うん、花壇の花も平気」
アナが、目に涙を一杯溜めて、微笑みを浮かべて答えた。アナは、こんな時でも、花壇の花の心配をしていた。そして、花が無事で、安心していた。アナは、どこまでも健気だった。
「障害児の魅力を伝えなくては……」
妹子が、そう呟いて、アナの為に奮闘することを誓った。
小学校には、普通学級の生徒が、支援学級の生徒と一緒に遊ぶ交流会というシステムがあった。二週間に一度ほど開かれる交流会には、毎回十人ほどの普通学級の生徒が、集まってくれた。普通学級の生徒と支援学級の生徒が、支援学級の教室で、一緒にトランプなどをして遊んだ。
「ねぇ、交流会のメンバーで、何か出し物をしない? 何かを練習して、体育館とかで、発表するの。やり甲斐もあるし、交流会のことをみんなに知ってもらえるから」
妹子は、支援学級の生徒のために、必死だった。特に、アナの為に何かをしたかった。その結果が、この出し物だった。妹子は、支援学級の生徒に賭けた。この子たちならば、素晴らしい出し物を披露してくれる。そう信じていた。
「いいじゃん」アナが、乗り気になった。
交流会のメンバーが、しばらく議論を重ねた。
「ミュージカルは?」アナが、提案した。
「それいいね!」
交流会のメンバーが、アナに賛同した。
そうして、アナと妹子が、中心になって、交流会のメンバーが、ミュージカルの練習を始めることになった。妹子は、アナと支援学級の生徒を勇気付ける為、奮闘を始めた。
後日、演目は、アンデルセン童話の親指姫に決まった。アナが親指姫、妹子がツバメ、カズが王子様を演じることにした。その他の役は、交流会のメンバーに配役された。
画像の出典
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- http://www.oklab.ed.jp/weblog/hokubu/2013/12/post-737.html
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