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第二話


 誘拐犯は、アナを連れて、逃走していた。犯人は、無鉄砲なところがあったが、情が厚い男だった。
「ちょっと我慢してね」
 犯人が、アナに声をかけた。
「はい」
 アナが、元気よく返事をした。アナは、この状況が、飲み込めていない様子だった。
「なんて素直なんだ」
 犯人が、アナの魅力の虜になった。

 対策室では、アナの父母が、捜査に協力した。
「アナは、心臓病の合併症があって、手術しなければならないんです」
 アナの母が、半狂乱になった。アナの手術の期限が、迫っていた。アナの心臓の状態は、あまり良くなくて、最新の技術を用いれば、根治手術をすることもできたが、最新の医療技術と薬を用いたもので、数億円するものだった。
「数億円は、無理だわ」
 アナの母が、唇を噛んだ。
 アナの手術は、延命の為のものだった。

「金は、用意できたか?」
 犯人から、対策室に連絡が来た。
「アナを返してください!」
 アナの母が、懇願した。
「金は用意する。人質には、手を出すな」
 担当刑事が、犯人に冷静に言った。
「子供の母親に3000万円の入ったバッグを持たせて、病院前の道路に立たせろ」
 犯人が、指示をして来た。
「分かった」
 担当刑事が、それを了承した。
「第一にご自身の身を守ってください」
 担当刑事が、アナの母に告げた。
 ほどなくして、警察が、3000万円を用意した。
 アナの母が、刑事の指示に従って、バッグを持って、病院前の道路に立った。ほどなくして、バイクが、アナの母の横で、急停止して、犯人が、バッグをひったくって逃げた。
「アナの命が、かかっている。無理をするな!」
 担当刑事が、指示を出した。
 犯人は、3000万円の身代金をまんまと手に入れた。

 数時間後。対策室では、アナの父母と刑事、警察官が、なりゆきを見守った。
「犯人から入電!」
 対策室に緊張が走った。
「一万円、足りないぞ」
 犯人が、言った。
 犯人は、身代金の枚数をしっかり数えたらしい。
「アナの裸の写真をばらまくぞ!」
 犯人が、憤った。
「馬鹿が! 犯人を見つけ次第、撃ち殺せ」
 担当刑事が、怒り心頭。
「う、撃ち殺す……」
 警察官に動揺が走った。

「……なぜ一万円足りなかったんだ?」
 対策室が、慌ただしくなった。お金を用意した銀行員、それを運んだ警備員、管理していた警察官などを巻き込んで、一万円の窃盗犯探しが始まった。
「窃盗犯を突き止めねば、アナの命が危ない」
 全ての人が、人質への配慮をしていた。一万円の行方を徹底的に調べた。その過程で、犯人の携帯電話の通話記録から、犯人は、良三と言う二十代のフリーターであることが、確認された。そして、犯人は、三人と判明した。他の二人は、良三が、「黒幕」、「先輩」と呼んでいた。良三は、黒幕と先輩からの指示で動いていた。
「警察内部に共犯がいる……?」
 警察官が、尻尾を掴んだ。
「犯人の揺動作戦かも知れない……」
 担当刑事が、捜査を中断させた。


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