二万人の裁判員

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第二話


 今、とある県の地方裁判所の法廷で、被告人の審理が行われていた。被告人には、財産上の利益を得る目的での覚せい剤を密輸入、つまり、覚せい剤取締法違反の疑いがかけられていた。三人の裁判官と六人の裁判員が、その真実を暴こうとしていた。
「そんなことは知らない!」
 被告人は、一貫して、容疑を否認していた。
「しかし、実際に、貴方は、密輸入された覚せい剤を持っていた」
 検察官が、被告人を追求した。
「郊外のバーで、知らない女に小包をもらって、自宅の近くで、ひったくられたんだ!」
 被告人は、自分の無実を訴えた。
「主人は、そんなことしません!」
 被告人の妻も、傍聴席から、大声をあげた。
 バーでの目撃者の証言や監視カメラの映像などから、被告人が、覚せい剤を所持していたことは、明白だった。そして、いわゆる運び屋だったことを否定することは不可能だと思われた。
「無実を立証できますか?」
 検察官が、被告人に詰問した。
「それはできませんが、私は無実です!」
 被告人は、疲弊していたものの、最終陳述でも、罪を認めなかった。

     *

 数日前の午後四時頃、地元の公園で、幼児が、何者かにトイレに連れ込まれて、命を落とす事件があった。公園の監視カメラには、不鮮明であるが、犯人と幼児と思われる人物の映像が、録画されていた。
 警察は、当初、監視カメラの映像を公開しないで、内々に捜査を進めていた。この公園の幼児殺害事件の犯人の特徴は、「なで肩の男」だった。


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