二万人の裁判員

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第四話


 昼食の時間になった。
 裁判官が、退室して、裁判員が、評議室で出前の弁当を食べていた。
「お父さんは、哲学者だったの」
 アナが、外国人妻と会話をしていた。
「へぇ〜」
「もう死んじゃったけど。とにかく色々なことを考えるのが、好きな人でした」
「アナちゃんも、考えるの好き?」
「ううん。私は、単純だから。でも、お父さんみたいになりたいなって、思っている」
「私は、アニータみたいになるのが夢だったの。そしたら、結婚しちゃった。甲斐性無しだけど、優しい人だから」
 外国人妻が、笑った。外国人妻の夫は、公務員だった。

 裁判員は、昼食を食べ終わって、思い思いの時間を過ごしていた。
 外国人妻は、スマホをいじっていた。
「SNSですか?」
 アナが、外国人妻に声をかけた。
「そうよ。裁判中から、配信しているの」
 外国人妻が、評議室の様子をSNSにアップしていた。
「え〜、良いの?」
 アナが、驚いた。
「日本語、分かりませ〜ん」
 外国人妻が、悪びれる様子もなく、ネットに全て配信していた。

 この昼食の時間に、公園の幼児殺害事件に動きがあった。事件が、公開捜査になり、その映像が、ネットニュースに流されたのだ。
 ネットニュースのコメント:〈このなで肩、あの公園の犯人じゃね?〉
 外国人妻の配信している評議室の山田の映像を見て、ネットで色々議論されていた。しかし、外国人妻は、会話は結構できるが、日本語の文字が、よく分からないので、コメントの返事のしようもなかった。


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