父兄の参観日

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第一話


 アナの父、カズの父、義助の母が、地元の大きな福祉商品の企画会社で働いていた。三人は、企画課に所属していて、主に、障害児者のための特徴的な福祉商品を企画していた。
 本日は、企画会議の日で、三人は、自分で企画した福祉商品のプレゼンをすることになっていた。
 今回は、一点、異なる点があった。アナ、カズ、義助が、企画会議を参観することになっていたのだ。アナ、カズ、義助は、支援学校の高等部三年生の同級生だった。アナは、ダウン症で、少しメタボだった。いつも陽気で、クラスのムードメーカーだった。カズは、発達障害で、軽度の知的障害があった。授業中にフラフラしてしまうなどの傾向があった。義助は、小学二年生の時の交通事故で、左足が義足になった。
 企画会議の時間になって、アナの父、カズの父、義助の母が、プレゼン資料を持って、席に着いた。アナ、カズ、義助が、会議室の後ろの方の席に座った。
 司会者が、
「それでは、企画会議を始めます。今日は、子供たちが来ているから、遠慮なく意見を言ってください」
 と、挨拶した。
「はい!」アナ、カズ、義助が、声を揃えた。
 最初は、アナの父の順番だった。
 アナの父が、プロジェクターで、資料を提示しつつ、
「アナのお腹周りの脂肪を燃焼させるために、アナを横にさせて、お腹の上で、温水を循環させます。温浴効果というか……そうだ! ちょうど、流しそうめんの機械にように……実際に、そばやうどんを流して食べることも可能ですね……さらに、筋電気刺激を加えて……」
 と、プレゼンをした。
 正直、グッダグダな企画だった。
「もういい。子供たちの意見を聞こう」司会者が、呆れ顔。
「どうして、温かいそばやうどんを流して食べる機械は、存在しないのでしょうか?」アナが、質問した。
「答えてあげなさい」司会者が、アナの父に指示した。
「……夏だから?」
「あ、そうか!」アナが、納得。
「……多分、伸びちゃうからだと思うよ」司会者が、突っ込みを入れた。
「あ、そうか……」アナの父が、納得。
「次の質問は?」
「お風呂でシャワーでマッサージしたりするのと、どう違うのですか?」カズが、意見を述べた。
「ああ、それは簡単です。うちの商品を買ってもらえるか否か。その一点に尽きます」アナの父が、当然のように答えた。
「君は……まあ、良いだろう。次」司会者が、諦めの表情。
 カズの父の番になった。
 カズの父が、席を立って、
「AR、拡張現実の技術を生かして、タブレットの文字を常に目線の先に持って来ます。そうすれば、授業中にフラフラしたり、落ち着きのない時にも、授業を続けることができます」
 と、プレゼンをした。
「ストレスになってはしまわないかい?」司会者が、心配をした。
「そうですね……例えば、キャラクターが、楽しく文字を表示する手助けをしては?」カズの父が、返答をした。
「なるほど。確かに、文字の大きさを変えたり、背景色なんかも、自由自在だ……楽しく授業ができれば良いのだが」
「今後の課題にします」
「子供たちの意見は?」
「タブレットを目線の先に取り付ける器具を作ったりするのは?」義助が、アイデアを出した。
「ああ、それでもできるけど、黒板が見えないよね」カズの父が、すぐさま返事をした。
「ああ、そうか」
「ARっていうのが、ミソなんだ」
「ポケモンは、出て来ますか?」アナが、真顔で質問した。
「考えてなかったけど、出しても良いかもね。楽しく授業を受けたり、息抜きになるなら、アリだと思う」
「楽しそう!」
「そう思ってもらえる商品が、一番だと思っています」カズの父が、優しく微笑んだ。
 義助の母が、プロジェクターに映像を映して、
「義足用のペンを開発しました」
 と、プレゼンを始めた。
「何に使うんだ?」司会者が、怪訝そうに聞いた。
「義足って、味気ないですよね。そこに、好きなキャラクターの絵を描いたり、パラスポーツ大会前に友達の書き込みをしたり……心の支えみたいなものを提供したいんです」
「インターネットの画像を印刷して、義足に貼り付ける、ステッカーみたいなものもあっても良いかもね」
「あ、良いですね」
「よし、検討しよう。子供たち!」司会者が、子供たちの方を向いた。
「義足の底って、どうなっていますか?」アナが、真面目に質問した。
「そうだな……滑り止め加工されているんじゃないかな?」
「義足の底に絵とかを彫って、足跡に、かわいい絵が残ると良いな」アナが、アイデアを提示した。
「女の子らしいね。可能だろうね」
「普通の靴の底にもあれば良いのに」
「本当だね。そっちの方が売れるかな?」
「ハッハハハハ」
「看護師さんの靴底とか。患者さんを勇気づける絵があると良いな」義助が、しみじみと意見を述べた。
「流石、入院生活が長かっただけのことはある」義助の母が、義助を持ち上げた。
「そういった意味では、福祉商品になるかも知れない。よし、検討しようよ!」司会者が、まとめた。
 それから、連絡事項などの確認をして、企画会議が、終了することになった。
「今日は、貴重なご意見をありがとう。最後に、何か意見はあるかな?」司会者が、子供たちに声をかけた。
「皆さんは、どうして、この仕事を選んだんですか?」アナが、席を立って、真剣に質問した。
「全ては、子供たちのためだよ」アナの父が、当たり前のように答えた。
「素晴らしい参観日でした。三人には、新商品の完成披露会のモデルを務めてもらいますから」司会者が、アナ、カズ、義助に告げた。
「え〜、照れるなぁ」アナが、照れ臭そう。


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