父兄の参観日

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第二話


 企画会議が終わって、アナの父が、部屋から出ようとすると、司会者が、
「藤神くん、ちょっと……」
 と、アナの父の腕を引いた。
「なんでしょう?」アナの父が、司会者とともに、部屋から出て、廊下の隅に行った。
 その時、アナが、アナの父のそばに来て、
「どこ行くの?」
 と、スーツの袖を引っ張った。
「ああ、アナちゃんは、ちょっと席を外してもらえるかな?」司会者が、アナに声をかけた。
「そうは行きません。娘ですから」アナが、キッパリと言った。
「そうかい……君には、会社を去ってもらいたい」司会者が、アナの父に告げた。
「え?」
「つまり、リストラだよ」
「そ、そんな……」
 司会者が、それだけ言って、去って行った。
「何を偉そうに。お父さんが、あいつをリストラしちゃえば良いのよ」アナが、お冠。
「社長なんだ……あの司会者」アナの父が、力なく答えた。
「そうなんだ……お父さん、元気出して」アナが、父に飴の袋を渡した。袋には、飴が、二〇個ほど入っていた。
「ブランデー入りか。今日は、これで酔うとしようかな」父が、飴の袋をスーツのポケットにしまった。
 アナとアナの父が、帰宅した。
 アナの母が、夕食の支度をして、みんなで食べ始めた。
「今日、お父さん、リストラ宣告っての、されてたよ」アナが、唐突にアナの母に報告した。
「え! 本当なの?」アナの母が、驚いて、アナの父に聞いた。
「ああ、本当だ……」アナの父が、意気消沈。

 翌日、アナが、元気に支援学校から帰って来た。
「お母さん、授業参観があるって」アナが、支援学校の授業参観の連絡票をアナの母に見せた。
「あら、その日、都合悪いわ」アナの母が、カレンダーを見て答えた。
「お父さん、来てくれる?」アナが、アナの父に聞いた。
「……ああ、良いだろう」アナの父は、その頃、会社を去っている予定だった。


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