リモート観戦パーティー

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第一話


 2021/8/16:東京パラリンピック「原則すべての会場で無観客開催」4者会談  東京パラリンピックの観客の扱いについて話し合う大会組織委員会やIPC=国際パラリンピック委員会など4者による会談が開かれ、原則としてすべての会場で観客を入れずに開催されることが決まりました。

NHKウェブ
 東京パラリンピックが無観客になった。  アナ、義助、先生は、このニュースを放課後の練習中に知った。 「先生と喜びを分かち合えないじゃん!」アナが、この世の終わりのように悲しんだ。 「ネット配信されるようだから、画面の向こうから、声援を送ってくれれば良いよ」先生が、アナを慰めた。一番辛いのは、先生に他ならなかった。 「先生、僕たち、どんなことになろうとも、応援しますから」義助が、先生に言葉をかけた。 「ああ、ありがとう」先生は、清々しい表情をしていた。無観客でも、やることは同じだ。画面を通して、精一杯に走る姿を見せる。ただそれだけだった。  アナが、支援学校の授業の後に、義助と話をした。 「声援を送りたいし、みんなで盛り上げたいじゃん!」アナが、言い出した。 「何とか、応援の声を先生に届けたいよね」義助も、その方法を考えた。 「会場の外から、大声で応援するのは、違うよね?」 「多分、警察来るよ」 「じゃ、zoomで、パーティーを開きましょう!」アナが、提案した。 「どんなやつ?」義助が、興味津々にアナに問うた。 「そうだな……zoomで、先生の縁の人々を呼んで、一緒に先生の勇姿を観戦するの。そして、先生の昔話やエピソードを語り合うの。題して、『リモート観戦パーティー』」アナが、考えを述べた。 「良いじゃん」義助が、心から、アナの意見に賛同した。  アナと義助が、『リモート観戦パーティー』に関するウェブサイトを作った。  ウェブサイトには、多くの『リモート観戦パーティー』の情報が、集まった。基本的には、有名人が主催者となって、定員を決めて、パーティー参加権を落札する形式をとった。
主催者 定員 最低落札金額
石原さとみ 15 357,800円
サンドイッチマン 100 15,873円
松本人志 100 14,638円
爆笑問題 100 14,587円
羽生結弦 2,000 13,974円
池田璃花子 100 12,874円
中西麻耶 80 12,475円
大谷翔平 50 10,387円
潮田玲子 80 7,963円
田中理恵 80 6,653円
田村淳 50 5,703円
佐々木宏&渡辺直美 100 4,762円
松岡修造 100 2,780円
小池百合子 100 2,620円
丸川珠代 100 1,060円
バッハ会長 10,000 203円
森喜朗 50 26円
 東京パラリンピックの日になった。  実際に、アナが『リモート観戦パーティー』を主催して、義助、先生の恩師、同僚、支援学校の教え子と卒業生、先生の妻、息子の優優ゆうゆう、先生の母らが参加してくれた。  アナ:〈先生が、本日いよいよ登場します!〉  アナが、軽快に『リモート観戦パーティー』の実況を始めた。  義助:〈マルクス・レーム選手も、出走するからね!〉  アナ:〈誰それ?〉  義助:〈知らないのかよ。伝説の義足のジャンパーだよ。オリンピック選手よりも、遠くにジャンプするんだ〉  アナ:〈そんなことあるの?〉  義助:〈だから、東京オリンピックにも、出場依頼を出したんだけど、間に合わなかった〉  アナ:〈へぇ、面白そうだね。ところで、どうして、走り幅跳びに、知的障害クラスがないんだろうね?〉  義助:〈本当に何も知らないんだな。二〇〇〇年のシドニーパラリンピックで、スペインのバスケットチームが、知的障害者と偽って、健常者を出場させていたんだ。十二人中十人も〉  アナ:〈本当に?〉  義助:〈僕が主催しているみたいだな〉  アナ:〈あ、先生が、登場しました! 皆さん、発言してくださいな!〉  アナが、『リモート観戦パーティー』の参加者に声をかけた。  先生の恩師:〈あの子は、責任感の強い子でね……二年生ながら、陸上部のキャプテンをしていた〉  アナ:〈二年生なのにキャプテン!〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  同僚:〈今も、支援学校の陸上部の顧問として、責任感を発揮していますよ!〉  アナ:〈毎日本当に厳しい指導をしてくれています。頼んでもいないのに……〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  教え子:〈本当に厳しいけど、愛情を感じるわ〉  アナ:〈おべっかを使うなよな!〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  卒業生:〈その厳しい指導が、懐かしく感じる時が来るよ。嫌でも忘れないから〉  アナ:〈そんなものですかねぇ?〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  妻:〈皆さん、本当にすみません。主人は、負けず嫌いなところがありまして……〉  義助:〈いえいえ。みんな先生には感謝していますよ〉  息子の優優:〈そう言っていただけると幸いです〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  アナ:〈優優、おませなことを言うのね!〉  みんな:〈ハッハハハハ〉  アナ:〈リモート観戦だから、色んな人と会話できますね!〉  先生の母:〈参加させてもらいますよ〉  先生の母が、病院からリモート参加した。  優優:〈ああ、お祖母ちゃんも、参加してくれたんだ〜〉  先生の母:〈あの子に教えてもらいましたよ〉  優優:〈お父さんに?〉  先生の母:〈はい〉  アナ:〈あ、先生の番だ!〉  アナが、嬉しそうに声を上げた。


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