リモート観戦パーティー

トップ > リモート観戦パーティー

第三話


 二〇二一年になって、ようやく、東京パラリンピックの予選が、開催されることになった。
「やっと予選だ!」アナが、喜び勇んだ。
 予選には、アナと義助の姿もあった。アナは、四〇〇メートル、義助と先生は、走り幅跳びに出場した。
「アナ、気合入れていけ!」義助が、アナを鼓舞した。
「当たり前よ!」アナが、気合を入れた。
 アナが、出走した。
 どんどん抜かれて、ビリになってしまった。
「参加することに意義がある」アナが、負け惜しみを言った。
「ハッハハハハ」
 義助の出走の番になった。
「義助、落ち着いてな」アナが、心配して声をかけた。
「アナのおかげで、緊張がほぐれたよ」義助が、微笑んだ。
「それが狙いだったんだよ」アナが、お茶目に言った。
「ハッハハハハ」
 義助が、跳躍した。
 良い記録が出たが、東京パラリンピックに出場するには、少し及ばなかった。
「先生、いよいよですね」義助が、先生に声をかけた。
「優優のために、跳んでください」アナが、真剣に言った。
「ああ、みんなのために」先生が、真剣になった。
 先生が、助走して、跳んだ。
 素晴らしい記録が出た。
 そして、東京パラリンピックへの出場を決めた。
「さすが先生!」アナが、大興奮。
 その帰りだった。
 アナと義助が、帰りのバスを待っていたら、地元の中学生が、
「お前ら、障害児だろう!」
 と、因縁をつけて来た。
「はい……」アナが、小さな声で、正直に答えた。
「ここで何してんだよ!」中学生が、アナをどついた。
「止めてください」義助が、勇敢にも、中学生の腕を掴んだ。
「なんだぁ、お前!」中学生が、義助を殴った。
 そこへ、先生が登場して、
「何をしている!」
 と、大きな声で言った。
「あ、先生!」アナが、震える声で叫んだ。
「何だよ、先生まで、義足かよ」
 中学生が、去って行った。
「大丈夫か?」先生が、アナと義助の心配をした。
「助かりました」義助が、先生に告げた。
「気にするなよ……悔しかったら、パラスポーツで活躍しなさい。誰も偏見などしなくなるから」先生が、アナと義助を諭した。
「はい」義助が、返事をした。
「また先生の家でお祝いパーティーを開きましょう!」アナが、気分を入れ替えて提案した。
「それはできない」先生が、即答した。
 コロナの影響で、パーティーなどを開く状況ではなかった。
「じゃ、zoomでなら?」義助が、妥協案を出した。
「そうだな、それなら」先生も、許可を出した。
 それから、各自自宅に戻って、食後にzoomで繋がった。
 先生の自宅では、先生、妻、優優が、画面に向かった。
 優優:〈東京パラリンピックのメダルを首にかけて、眠りたいな〉
 優優が、夢を語った。
 先生:〈よ〜し、取ってやろうじゃないか〉
 みんな:〈ハッハハハハ〉
 それからも、五人で、zoomを楽しんだ。
 時間が経ち、優優が、眠そうにしていた。
 妻:〈優優と一緒に寝て良いかしら? 明日、早いの〉
 先生:〈ああ、もちろん〉
 先生の妻が、優優を寝かしつけるために、寝室へ行った。
 アナ:〈先生、優優のために、一肌脱いでくれませんか?〉
 先生:〈アナと義助……僕の義足の話を知っているのかい?〉
 義助:〈……奥様から聞きました〉
 先生:〈そうか……妻が言うくらいなんだから、アナと義助を信用したんだろう……確かに、いつまでも隠し通すわけにはいかない。よし、詳しく話すよ……あれは、優優が二歳の時だった。歩けるようになったのが嬉しかったんだろうね。家族で電車で遊びに行った帰り、駅のホームで走っちゃって……優優は小さかったから、人の間をスルスルとすり抜けて……ホームから転落した。幸い、大きな怪我はなかったんだが、電車が来ていた……僕は、とっさにホームの下に飛び降りて、優優を弾き飛ばした。しかし、僕は、左足を切断することになってしまった……〉
 義助:〈そんなことが……〉
 先生:〈アナと義助は、どうしたい?〉
 アナ:〈優優のためになることをしたいです〉
 先生:〈それじゃ……〉
 だから、『リモート観戦パーティー』を開催することに決めた。


前へ  目次  次へ

Copyright (C) SUZ45. All Rights Reserved.