採寸

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第二話


 翌朝、アナと義助が、支援学級の教室に行くと、教頭先生が、現れて、
「剛田先生が、緊急入院しました」
 と、告げた。
「え!」アナが、思わず声を上げた。
 放課後、アナと義助が、剛田先生のお見舞いに行った。
「この歳になると、体中にがたが来ていてね。なあに、すぐに退院できるさ」剛田先生が、穏やかに言った。
「良かった……」アナが、安堵した。
「アナ、こんな時になんだけど、進学先は、支援学校にしよう」剛田先生が、アナを諭した。
「嫌です!」アナが、突っぱねた。

 翌日以降、アナが、授業中、泣きながら、
「勉強ができない……!」
 と、机に向かった。
 義助が、見るに見兼ねて、
「勉強会を開こう」
 と、申し出た。
 以来、義助が、アナのテスト対策のために勉強を教えた。
 数日後の放課後、義助が、勉強のドリルを手に入れて、
「アナ、これで勉強しろ」
 と、アナに渡した。
「くれるの?」
「ああ、アナのためのものだよ」
「ありがとう」
 翌日の朝、アナが、登校して、
「義助〜、ありがとう! あのドリル、すごく分かりやすいわ!」
 と、興奮気味。
「そうかい」義助が、満足そうに微笑んだ。

 数日後、剛田先生が、退院した。

 すぐに、市内の小学校の一斉テストの日になった。
 剛田先生が、アナと義助に、
「このテストの成績で、進学先が決まるといっても過言ではありません」
 と、伝えた。
「頑張らないと!」アナが、気合を入れた。
 アナと義助が、普通学級の生徒とともに、テストを受けた。

 二週間後、テスト結果が出た。
「やったわ!」アナが、喜んで飛び跳ねた。
 アナの偏差値は、意地の六十だった。
「アナ、進学先は、普川中学校に決まったよ」剛田先生が、嬉しそうにアナに伝えた。アナが、偏差値五十五以上をとって、普川中学校に行けることになった。
 しかし、剛田先生に笑顔はなかった。
「義助は、この偏差値じゃ、普川中学校は、無理だ」剛田先生が、義助に告げた。
 義助は、テストの成績が悪かった。
「ごめん、義助……」アナが、気まずさを感じた。
「僕には、パラスポーツしかないから」義助が、黙々と運動場で、走り込みを続けた。
「義助……」アナは、ただ義助と一緒に走った。

 二週間後、剛田先生が、支援学級の教壇に立って、
「義助、朗報だ」
 と、にこりと笑った。
「なんですか?」義助が、問うた。
「普川中学校に行けるそうだ」
「ほ、本当ですか!」義助が、喜んで、ガッツポーズをした。
「パラスポーツ推薦の枠がとれた」
「パラスポーツ推薦……」
「パラスポーツ選手のスポーツ推薦って、あるんだね?」アナが、感心した。
「今年からなんだ」剛田先生が、嬉しそうに述べた。
「剛田先生が、推薦枠を作ったの?」アナが、驚いて聞いた。
「まさか! 義助の志望校は、アナと同じ中学校だって言うから」
「キモ〜い!」アナが、大声を上げた
「キモいってなんだよ」義助が、突っ込んだ。
「ハッハハハハ」
「まあ、それは冗談として、先方から依頼が来たんだ。義助が欲しいと」剛田先生が、真剣に伝えた。
「……なんか嬉しいな」義助が、ほっとした様子。
「努力の成果だと思うよ」
「ありがとうございます」
「アナに救われたよ」義助が、アナに声をかけた。
 義助は、アナと一緒に毎日にように運動場で練習した成果を強調した。
「感謝しろ」アナが、お茶目に言った。
「ハッハハハハ」

 アナと義助が、制服店に行った。
「支援学校じゃなくて、普川中学校に進学するんですが、もう制服、作っちゃいましたか?」アナが、心配そうに制服店の店主に聞いた。
「大丈夫。まだ作っていませんよ。剛田先生から、連絡を受けていましたから。ギリギリまで待ってくれと」制服店の店主が、微笑んだ。
「剛田先生……」アナが、感謝の意を示した。
「あの勉強のドリルも、剛田先生が、作ってくれたんだよ。入院中の時間を利用して」義助が、アナに伝えた。
 剛田先生は、入院中も、ずっとアナと義助のことを考えていてくれた。
「剛田先生が……?」
「本当に親身になってくれた」
「嬉しいな」


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