そういう差
第一話
オリンピック選手と会社員は同じ人だけど、ちょっと違う。健常者と障害者も同じ人だけど、ちょっと違う。
そういう差。
みんな、それぞれの人生があり、一生懸命に頑張っている。
確かに、オリンピック選手は、持って生まれたものもある。人一倍の努力の成果もある。だから、感動を与えることができる。
障害者は、オリンピック選手と同じようなもの。
*
片田舎の市郊外には、比較的大きな支援学校があった。この支援学校には、三棟の校舎と体育館、それに大きな運動場があった。運動場の中央には、全長二百メートルの長円形のトラックが、配置されていた。
アナと義助が、そのトラックをヘトヘトになって、駆けていた。
「まだまだ! それじゃ、パラリンピックなんて、夢のまた夢だぞ!」
義助の父のゲキが飛ぶ。
オリンピック・パラリンピックの予選が近付いていて、義助の父が、アナと義助の練習の指導をしてくれていたのだ。
「流石に厳しいけど、指導は、確かね」
アナが、義助の父に敬意を払った。
「現役のアスリートだからね」
義助が、誇りを持って、答えた。
アナ、義助、義助の父は、三人とも、四百メートルの陸上選手だった。
アナと義助は、パラリンピックを目指して、義助の父は、オリンピックを目標にしていた。
一方、アナの父は、運動場の端っこの方の日陰で、水筒の麦茶を飲んで、のんびりと三人を見守っていた。
昼過ぎ、義助の父が、
「少し休憩しようか」
と、アナと義助に声をかけた。
「うん」
義助が、練習を切り上げて、アナの父のところにあった荷物から、スポーツドリンクを取り出して、一気に飲み干した。
「お父さんも、少しは、練習、手伝ってよ!」
アナが、アナの父を責めた。
アナの父は、それには答えず、アナに、
「麦茶飲む?」
と、水筒のコップの麦茶を勧めた。
「飲む」
アナが、素直に受け取り、ぐいぐい飲んだ。「美味い! もう一杯」
「はいよ」
アナの父が、アナに、麦茶のお代わりを手渡した。
練習の時は、いつもこんな感じで、アナと義助が、支援学校の運動場で義助の父の指導を受けて、アナの父が、日陰で見守っていた。
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