童話
狼と七匹の子ヤギ
昔、あるところに、お母さんヤギと七匹の子ヤギが住んでいました。末っ子の子ヤギはダウン症です。
ある日、お母さんヤギは、街に出かけることになりました。
「最近は悪い狼がいるからドアを開けてはダメよ」
「大丈夫だよ、お母さん」
子ヤギたちは、元気に返事をして、お母さんヤギは、出かけました。
それからほどなくして、ドアをノックする音がしました。
「お母さんだよ、ドアを開けておくれ」
「お母さんは、そんな声じゃない」
狼が現れましたが、子ヤギは見破りました。
狼は、チョークを食べて、綺麗な声で言いました。
「お母さんだよ、ドアを開けておくれ」
「お母さんは、そんな黒い足をしていない」
またも、子ヤギに見破られました。
狼は、小麦粉を足に塗り、再び現れます。
「お母さんだよ、ドアを開けておくれ」
「あ、本物だ」
子ヤギは、ドアを開けてしまいました。
「手こずらせやがって、お前ら、全員食べてやる!」
狼は、子ヤギたちを次々と食べてしまいました。最後に残ったのは、末っ子の子ヤギでした。
「お前はダウン症だから食べない」
「汚いってことですか?」
「違う」
「じゃあ何でですか?」
「お前は残って親孝行してやれ、俺の子供もダウン症だ」
狼は、末っ子を残し、外に出ましたが、子ヤギたちを食べて満腹になったので、すぐ近くで寝てしまいました。
その後、お母さんヤギが戻ってきました。
「お母さん、みんな狼に食べられちゃったよ」
「何てこと!」
お母さんは、ぐっすり眠っている狼を見つけ、お腹を押して、子ヤギたちを吐き出させました。
「お母さん!」
「おお、かわいい子ヤギたちよ」
「怖かったよ!」
「もう大丈夫、狼を懲らしめてやらなくちゃ」
「お母さん、狼さんが、僕だけ残して、親孝行しろって言ってたよ」
「騙されちゃダメ」
「でも」
「お父さんはね、生まれたてのあなたを守るために、狼と闘って死んだのよ」
「お父さんが・・・」
「そうよ、容赦しちゃダメ」
「それでも、狼さんを許してあげて」
「ダメよ!あなたは優しすぎるの!」
「どうして僕だけ残したか分かる?」
「・・・どうして?」
「狼さんの子供もダウン症だって」
「そう・・・」
「貴方たち、もうドアを開けない?」
「うん、開けない」
「狼さんを許してあげたい?」
「もちろんだよ」
結局、みんな狼を許しました。
「貴方たち、みんな優し過ぎよ」
「お父さん、なんて言うかな」
「許すでしょうね」
「お父さんも優し過ぎだ」
「同志の絆ね」
了
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