童話
シンデレラ
お城の近くの立派な邸宅にシンデレラという女の子がいました。
シンデレラは、早くにお母さんを亡くし、継母とその娘たちと暮らしていました。
シンデレラは、継母やお姉さんにいじめられ、いつも汚い身なりをして、薪割などをしていました。
ある日、お城で舞踏会が行われることになりました。お城には、ちょうど婚期を迎えた王子様がいました。
「もしかしたら私、王妃になれるかもしれないわ」
シンデレラのお姉さんたちは、そんな風に期待しておめかししていました。
「シンデレラ、お前は留守番だよ」
「汚い顔を見せるんじゃないよ」
「一家の恥さらし」
そんなことを言って、継母とお姉さんたちは、舞踏会に向かいました。
「ああ・・・舞踏会に行けたらな・・・」
「行きたいの?」
「あなたは?」
「貴方の魔法使い」
「魔法使い?」
「ええ、何でも望みを叶えるの」
「・・・舞踏会に行きたいんです・・・」
「行ってらっしゃい」
そう言うと、シンデレラの汚れた服が一瞬にして立派なドレスに替わり、かぼちゃは馬車になり、近くにガラスの靴もありました。
「ただし、魔法は夜の 12 時に切れてしまうの。忘れないでね」
「どうお礼を言えばいいのか・・・」
「楽しんでらっしゃい。それが礼儀よ」
「涙が出ちゃう」
シンデレラは、颯爽と舞踏会に出かけました。
普段汚い服を着ているので、誰もシンデレラに気付きませんでした。しかし、シンデレラは、その愛くるしい笑顔で、周りの殿方を魅了しました。もちろん、王子様も。
「一緒に踊ってください」
「私でいいんですか?」
「ええ、貴方と踊りたいんです」
「踊ったことがありません」
「大丈夫、僕の隣にいればいい」
王子様と踊るシンデレラは、それはもう、活き活きとして、この世のものとは思えぬほどの魅力でした。
「あっ、いけない!」
「どうしたんだい?」
「帰らなくちゃ!」
もう数分で夜の 12 時になりそうだったんです。
シンデレラは、急いで、外に出て、階段を駆け下り、馬車に乗り込もうとしましたが、途中で転んで、ガラスの靴を片方落としてしまったのです。取りに行けば、間に合わない。苦渋の選択を迫られたシンデレラは、靴を残し、馬車に乗って、逃げ帰ってきました。
舞踏会は終わり、ガラスの靴だけが残されました。王子様は、家来に言いました。
「この靴に合う、あの女の子を探し出してほしい」
家来たちは、町中の女の子に靴を履かせますが、合いません。
そうして、シンデレラの邸宅にも、やってきました。
継母に見守られ、お姉さんたちも履いてみますが、合いません。
その時、ふと、外を見やると、灰まみれになって働く、シンデレラの姿がありました。
「あの子ではないだろう」
家来は、邸宅を後にしようとしました。
すると、不思議なことがありました。
家来の馬車がかぼちゃになっていたのです。驚いた家来は、王子様に連絡。
王子様が駆けつけました。
王子様は、シンデレラの姿を見て一言。
「靴を履いてくれませんか」
「・・・はい」
靴は、まさにシンデレラのために創られたようなものでした。
「ピッタリだ。舞踏会の王妃ですね」
「・・・王妃ではないです」
「いや、今からなるんです」
「・・・ダウン症なんです、私」
「知っています」
「じゃ、なぜ?」
「だからこそ幸せにしてあげたいんだ」
「王子様・・・」
王子様は、シンデレラをぎゅっと抱きしめ、言いました。
「亡くなった君のお母さんにはお世話になったよ」
「ご存じなんですか」
「天国からずっと見てたさ」
「あの魔法使いは・・・お母さん・・・?」
「さあ、祝杯を挙げよう! 未来の王妃のために!」
王子も家来もみんなで王妃の歓迎の儀式を執り行いました。
「その靴、君のお母さんが履いていたものだよ」
「やっぱり・・・信じてもらえないかもしれませんが、魔法使いになったお母さんに貰ったんです」
「信じるさ。君のお母さんならできそうだ。誰よりも君を愛していた」
「・・・(泣)」
シンデレラは、ただただ泣くばかり。
「主役がそれじゃ、盛り上がらないぞ。ぷりっ」
王子様は最後に屁をこいた。
「・・・(笑)」
シンデレラは、涙を流しながら、少し笑ってしまった。
「そう、それでいい。最後は笑ってなきゃ始まらない」
了
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