童話
金太郎
昔々、山奥に金太郎というダウン症の男の子がいました。
金太郎は、山の動物たちと仲良しで、毎日、相撲をして遊んでいました。
「はっけよい、のこったのこった」
「金太郎、頑張れ!」
金太郎は、みんなに応援されますが、いつも負けてしまいます。体の大きな熊はもとより、小熊や猿にも負けてしまいます。でも、負けても、みんなに愛されています。
ある日、大変な事態が起きました。雨で川が増水し、多くの動物たちが川に流されてしまったのです。みんな必死にあがきます。助けに入った、力の大きな、熊や猿、牛に、馬、みんな流されていました。
「どうしよう、みんな死んじゃうよ!」
リスや蝶々などは、どうすることもできず、ただただ心配するばかり。
そんな様子を見ていた金太郎が叫びます。
「みんな、オラに力を貸してくれ!」
金太郎は、増水した川に大木を倒して、橋を架けようとしたのです。
小動物や昆虫のみんなも力を合わせ、みんなで大木を押します。
「ぐあぁ、あと少しだ!」
金太郎の掛け声の下、ついに大木が倒れました。
「みんな、木に登るんだ!」
金太郎は、倒した大木を渡り、多くの動物たちを助けました。
「金太郎、やればできるじゃん!」
「金太郎、本当にありがとう!」
みんなが金太郎にお礼を言います。
金太郎の功績は、都の偉いお侍さんの元まで知られることになりました。お侍さんは、金太郎を家来に迎えようとしましたが、金太郎は断りました。
「亡くなった動物の友達もいます。僕は完ぺきではない。家族を失った山の動物たちのためにできることをしたいんです。ごめんなさい」
「いやいや、良いんだ。君は、山に残るべきかもしれない。再び増水しないように、堤防を作らせよう」
堤防もでき、金太郎は、みんなから感謝されました。
金太郎は、増水で亡くなった動物たちの供養のために、立派な神社を建てました。
神社の真ん中には、土俵を作り、いつまでも笑いの絶えないみんなの社交場となりました。
「これでいい。みんなの笑い声が何よりの弔いになる」
金太郎は相変わらず、負けてばかり。優しすぎるんです。
了
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