童話
親指姫
昔、子供のいない女性が、魔法使いに言いました。
「どんな子でもいい。私に授けてください」
「どんな子でも?」
「ええ」
魔法使いは、女性に言いました。
「お前の育てるチューリップをよく見てごらん」
女性が、自身が栽培しているチューリップを見に行くと、一つだけ、大きくつぼみの膨らんだチューリップがありました。そっと手を差し出すと、つぼみが開いて中から親指ほどの小さなダウン症の女の子が現れました。
「おお、なんというかわいい子なの」
女性は、親指姫を大切に育てました。
しかし、ある日、ヒキガエルが、親指姫をさらってしまったのです。
「さあ、私の息子と結婚するんだよ」
「嫌です」
さらわれた親指姫は、その怖さから、ヒキガエルとの結婚を拒み、泣き出してしまいました。
泣き声を聞いた魚たちが、親指姫の乗っているスイレンの葉を引っ張って助けてくれました。
途中から、蝶々が葉を引っ張ってくれましたが、途中、コガネムシに捕まってしまいました。森の奥で、一人寂しく暮らしました。
冬の寒い日、我慢できず、野ネズミのおばさんに助けを求めました。野ネズミのおばさんは、親身になって助けてくれました。
しかし、近くに住むお金持ちのモグラが一目ぼれ。親指姫は、モグラと結婚させられることになりました。モグラと結婚し、花のない地中で暮らすのが嫌でした。
そんな時、怪我をしたツバメに出会いました。親指姫は、ツバメを介抱し、助けてあげました。
そして、モグラとの結婚式の日、ツバメが親指姫をさらってくれました。
「さあ、どんなところにでも連れてってあげるよ。どこが良い?」
「お花のあるところが良いです」
「どんなお花?」
「チューリップ」
「OK」
ツバメが親指姫をチューリップ畑に降ろすと、チューリップのつぼみ中に、親指姫と同じくらいの大きさの王子様がいました。一目で恋に落ち、二人は結婚することになりました。
そして、結婚式。
チューリップ畑に立った親指姫は、ふと、気付いた。
「ここ・・・私の生まれたチューリップ畑だわ」
「そうだよ、姫」
「知ってたの?」
「ごらん、あのチューリップの上を」
「・・・お、お母さん!」
親指姫は、幼いころに別れてしまったお母さんに再会し嬉しくて、泣きじゃくっていました。
「ごめんね、姫」
「お母さん(泣)!」
「久しぶりだね」
「・・・うん、嬉しい」
「さあ、みんな待ってるよ」
お母さんに促され、結婚式の来客に目をやり、親指姫は驚いた。
「みんな・・・」
ヒキガエル、魚たち、蝶々、コガネムシ、野ネズミ、モグラ、そしてツバメ。
今まで出会った生き物たちが、結婚式に参列していたのです。
「おめでとう!」
皆、口々に祝辞を述べました。
親指姫は、みんなにお礼を述べ、母に問います。
「お母さん、これって・・・」
「かわいい子には旅をさせろって言うでしょ」
「お母さん、冗談キツイよ・・・」
「これからの旅はこんなもんじゃないからね」
「・・・ありがとう。この先も乗り越えていけそう」
「母亡き後も幸せ掴むのよ」
「・・・分かりました」
程なくして、母が亡くなった。まるで、その死を予見していたかのように・・・。
「大丈夫、僕が守るから」
王子は、親指姫を支えたが、親指姫は、涙を見せなかった。
「不思議なの、お母さんが私の中で生きてるの。一人ぼっちじゃない。そんな気がするの」
「姫・・・」
「強くなったの、私」
了
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