童話
ラプンツェル
昔、子供に恵まれなかった夫婦がいました。
ある日、ようやく妊娠した妻が、言いました。
「赤ちゃんが動いてないの」
検査に行くと、妻子共に命を危ぶまれる状態であることが判明。赤ちゃんがダウン症だったからです。
「赤ちゃんが死んじゃう・・・」
疲弊した妻と赤ちゃんを救おうと、夫は問います。
「どうすればいいんだい?」
「ラプンツェルを食べれば大丈夫」
「しかし、ラプンツェルは、魔女の敷地にしか生えていない」
「そうね、この子は諦めるしかないのかしら」
「いや、大丈夫、僕が採ってくる」
そうして、夫が、妻と赤ちゃんのために魔女の敷地に入り、ラプンツェルを摘み取りました。
しかし、魔女が激怒します。
「勝手にラプンツェルを採りおって許さん!」
「子供を無事出産させたいんです」
「そうかい。じゃ、ラプンツェルを渡そう。しかし、生まれた子は私がもらうよ」
「そんな・・・」
「さあ、どうするんだい? 子供を助けたいのか見捨てるのか」
「・・・分かりました。生まれた子は渡します」
そうして、ラプンツェルのおかげで元気な赤ちゃんが生まれ、ラプンツェルと名付けられました。
「さあ、赤ん坊をお渡し」
魔女がやってきて、ラプンツェルを連れていこうとしました。
「どうかラプンツェルを連れて行かないでください!」
妻が必死に抵抗しますが、魔女には敵いません。
「ラプンツェル!」
そうして、夫婦は、ラプンツェルを連れて行かれてしまいました。
ラプンツェルは、魔女の敷地にある塔に幽閉されました。
何年もの歳月が過ぎ、塔からは、ラプンツェルの美しい金髪が垂れ下がっていました。
ある日、近くの国の王子が、この髪をつたって塔に登りました。ラプンツェルが幽閉されていたことに驚きました。
「ここで何をしているんだい?」
「魔女に幽閉されているんです」
「いつから?」
「生まれてすぐです」
「何てことだ・・・」
王子は、ラプンツェルの魅力に惹かれ、何度も塔に登りました。
やがて、ラプンツェルは、赤ちゃんを宿します。
しかし、それに魔女は激怒。
「お前は、なんて子だい!」
魔女は、ラプンツェルの髪を切り落とし、森へ捨ててしまします。
また、王子は、その顛末に絶望し、塔から身を投げ、失明してしまいました。
それから数年経ち、王子が森をさまよっていると、美しい歌声が聞こえてきました。
「ラプンツェルの声だ」
王子は、胸を高鳴らせ、声の主に尋ねる。
「ラプンツェルだね」
「王子様・・・」
「やっと会えた」
「探してくれていたんですか?」
「そうさ、君無しでは、僕は廃人も同然」
「目をどうかされたんですか?」
「塔から身投げして失明したんだ」
「何てこと・・・」
二人は抱き合い、ラプンツェルの涙が、王子の目に入る。
その時です。
「おお、見える、目が見える!」
「治ったんですか?」
「ああ、君の涙で失明が治ったんだ!」
「何てこと!」
二人は喜びを分かち合い、抱き合った。
「この子が僕の子かい?」
王子が、二人の子供を抱き上げた。
「かわいいでしょ」
「うん、かわいい」
「あのね、一つお願いがあるの」
「何だい?」
「私の両親に会いたいの」
「たやすい御用さ」
王子は、国に戻り、ラプンツェルの両親を探し出しました。
両親は、ラプンツェルと再会しました。
「おお、ラプンツェルや」
「お父さん、お母さん・・・」
「元気だったかい?」
「はい、子供も生まれたんです」
「子供?」
「はい」
「貴方、ダウン症なのに子供が生まれたの?」
「あら、ダウン症だと子供が産めないの?」
「調べたけど、難しいそうよ」
「・・・どうして生まれたんだろう」
ラプンツェルと両親が悩んでいると、王子が言った。
「魔女がそうさせたのかも」
「魔女が・・・」
そこに、魔女が訪れた。
「これくらいの幸がないと不公平だろう」
「ありがとうございます」
「礼は要らないよ。その子たちも苦労するだろうさ。王子よ、守ってあげられるかい?」
「この命に代えても!」
「命を粗末にするんじゃないよ」
魔女は、消え、温かい空気が流れた。
「物心ついた頃から色々教えてもらったの」
「魔女に?」
「言葉も生活に関することも、すべて」
「そうだったの・・・」
「魔女は、弱者には優しいと聞いたことがあります」
「ラプンツェルは、魔女を味方につけたのね」
「何でも一生懸命やるから好かれたんだよ」
「一生懸命やらないとできないんだもん」
「人徳ね」
了
画像の出典
- https://cinema.ne.jp/article/detail/38956
Copyright (C) SUZ45. All Rights Reserved.