童話
浦島太郎
お母さんと二人暮らしの心優しいダウン症の浦島太郎。
ある日、子供たちにいじめられていた亀を助けた。
後日、釣りをしていると、その亀が現れた。
「竜宮城にいらっしゃいませんか?」
「竜宮城?」
「ええ、貴方を特別にご招待します。私の甲羅の上にお乗りなさい」
太郎は、亀に乗り、海深くの竜宮城へ行った。
たくさんのご馳走や美女に囲まれたが、太郎はどこか不安げ。来て早々に言った。
「お母さんが心配するから帰ります」
欲望には目もくれず、お母さんをとった。
帰りに、乙姫様から、玉手箱を貰った。
「決して開けてはダメよ」
村に戻った太郎は、その雰囲気の違いに驚いた。
家に戻ると、ボロボロに古びていた。
「お母さん」
お母さんを呼ぶと、現れたのは、一人のお婆さん。
「太郎かい?」
お母さんは、太郎に再会できたことが嬉しくて、泣き崩れた。
「貴方がいるだけでいいの」
「僕もお母さんがいるだけでいい」
「でも、なぜ貴方は年をとっていないの?」
太郎は、竜宮城の話をしたが、お母さんは信じてくれなかった。困った太郎は、竜宮城で貰った玉手箱をお母さんに渡した。
「開けちゃダメって言ってたよ」
「開けてはいけないお土産があるものですか」
お母さんは、けげんそうに玉手箱を受け取った。
「そうだ、太郎。貴方に朗報があるの」
「何?」
「ダウン症の特効薬が開発されたのよ!」
「僕、治るの?」
「まだ試験中だけど、試してみる?」
「うん、お母さんが喜ぶのなら」
太郎は、特効薬を試したが、数か月間も意識がなかった。
「先生、太郎の意識は戻るんですか?」
「分かりません」
「一生、意識が戻らなかったらどうしよう・・・」
お母さんは、わらにもすがる思いで、禁断の玉手箱を開けてしまった。
すると、白い煙が出て、お母さんが、若返った。太郎がいなくなった頃の若さ。
その直後、太郎の意識が戻り、二人は歓喜に沸いた。周りは年をとってしまったが、二人は元通り。しかも、ダウン症が完治した。太郎とお母さんは、手に手を取り、涙した。
「玉手箱は、僕の唯一の願いを叶える箱なのかも」
「竜宮城に行って良かったね」
「人生のやり直しだ」
太郎は、前よりもお母さんを大事にし、幸せをかみしめた。
「幸せすぎて怖いや」
了
画像の出典
- https://hukumusume.com/douwa/pc/jap/07/01.htm
Copyright (C) SUZ45. All Rights Reserved.