落語
明烏
ダウン症の息子を持った母親には、心配事がありました。息子の時次郎があまりにも堅物すぎて、一切の遊びをしないのです。
ある日、近所の遊び人に頼んで、居酒屋に連れて行ってもらいました。
時次郎は、お酒を飲んだことがありませんでした。
そこで、遊び人たちは、時次郎に、「お酒は長生きの薬だ」とか「大人になったら飲まないと運気が落ちるぞ」などと言い、何とか居酒屋に連れ出した。
お酒を飲み始めて、やっと真相に気付いた時次郎は、慌てて居酒屋を出ようとしますが、遊び人たちが言います。
「大門には、見張りがいて、勝手に出ようとすると袋叩きにされますよ」
脅かされた時次郎は、しぶしぶお酒を飲み続けます。
結局、夜を明かすまで、飲み続けた時次郎と遊び人。
しかし、時次郎がとにかく、酒に強い。酒豪を相手に、遊び人たちは、完全に酔いつぶれてしまいました。そして、遊び人たちが千鳥足で帰ろうとすると、時次郎が言います。
「大門には、見張りがいて、勝手に出ようとすると袋叩きにされますよ」
遊び人たちは、そんな時次郎のタフさに降参しました。
「見張りなんていないよ。飲み終わったら勝手にお帰り」
時次郎は、満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「今度お母さんと一緒に飲みたいな」
了
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